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海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約

【目次】
  昭和51・3・31・条約  5号  
発効昭和51・9・1・外務省告示 65号−−
海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約をここに公布する。
締約国は、
海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある統一的規則を合意によつて定めることが望ましてことを認め、
このため条約を締結することに決定し、よつて、次のとおり協定した。
第1条  
(1)海上航行船舶の所有者は、次のいずれかの原因から生ずる債権につき、自己の責任を第3条の規定によつて決定される金額に制限することができる。ただし、債権発生の原因となつた事故が所有者自身の過失によるものである場合は、この限りでない。
(a)運送されるため船舶上にある者の死亡又は身体の傷害及び船舶上にある財産の滅失又は損傷
(b)(a)に規定する者以外の者(陸上にあるか水上にあるかを問わない。)の死亡若しくは身体の傷害、(a)に規定する財産以外の財産の滅失若しくは損傷又は権利の侵害があつて、船舶上にある者の行為、不行為若しくは過失で所有者が責任を負うものによるものは又は船舶上にない者の作為、不作為若しくは過失で所有者が責任を負うものによるもの。ただし、船舶上にない者の作為、不作為又は過失については、その作為、不行為又は過失が航行、船舶の取扱い、貨物の積込み、運送若しくは荷揚げ又は旅客の乗船、運送若しくは下船に関するものである場合に限る。
(c)沈没し、乗り揚げ又は放棄された船舶(船舶上にあるすべての物を含む。)の引き上げ、除去又は破壊につき難破物の除去に関する法令によつて課される義務又は責任及び海上航行船舶が港の構築物、停泊施設又は可航水路に与えた損害について生ずる義務又は責任
(2)この条約において、「人的債権」とは、死亡又は身体の傷害から生ずる損害賠償の債権をいい、「物的債権」とは、(1)に規定するその他のすべての債権をいう。
(3)船舶の所有者の責任が、所有者又はその行為につき所有者が責任を負う者の過失の証明をまたずに、船舶の所有、占有、保管黒部市田は支配から生ずるものであつても、所有者は、(1)の規定によりその責任を制限することができる。
(4)この条の規定は、次に掲げる債権については適用しない。
(a)救援若しくは救助又は共同海損の分担に基づく債権
(b)船長、乗組員、船舶の所有者のその他の被用者で船舶上にあるもの又は船舶の所有者のその他の被用者でその職務が船舶の業務に関係のあるものの債権並びにこれらの者の相続人及び権利承継人の債権であつて、役務の提供についての契約に適用される法令により、所有者が、自己の責任を制限する権利を有せず、又は第3条の規定によつて決定される金額よりも高い金額にのみ自己の責任を制限することができるもの
(5)船舶の所有者が同一の事故から生じた損害につき債権者に対して債権を主張することができる場合には、それらの者の債権は、相殺されるものとし、この条約は、その残額についてのみ適用する。
(6)債権発生の原因となつた事故が所有者自身の過失によるものであるかどうかを証明すべき者は、法廷地法によつて決定される。
(7)責任の制限を主張することは、責任を認めることとはならない。
第2条  
(1)次条の規定によつて決定される責任の限度は、一の事故から生ずる人的債権及び物的債権の総額について適用するものとし、他の事故から既に生じており又は生ずることがある債権は、考慮しない。
(2)一の事故から生ずる債権の総額が次条の規定によつて決定される責任の限度額を超える場合には、その限度額に相当する額の一の制限基金を形成することができる。
(3)(2)の規定によつて形成された基金は、責任を制限することができる債権の弁済にのみ充てられる。
(4)基金が形成された後は、基金に対して権利を行使することができる債権者は、基金が当該債権者の利益のために実際に用いることができるものである限り、同一の債権に関し、船舶の所有者の他の財産に対していかなる権利をも行使することができない。
第3条  
(1)船舶の所有者が第1条の規定に基づき自己の責任を制限することができる金額は、次のとおりとする。
(a)事故によつて物的債権のみが生じている場合には、船舶のトン数につきトン当たり1000フランで計算した金額
(b)事故によつて人的債権のみが生じている場合には、船舶のトン数につきトン当たり3100フランで計算した金額
(c)事故によつて人的債権及び物的債権の双方が生じている場合には、船舶のトン数につきトン当たり3100フランで計算した金額。この金額のうち船舶のトン数につきトン当たり2100フランで計算した第一の部分は、人的債権の弁済にのみ充てるものとし、船舶のトン数につきトン当たり1000フランで計算した第二の部分は、物的債権の弁済に充てる。ただし、第一の部分が人的債権を完済するために十分でない場合には、弁済されていない人的債権の残額は、物的債権と同一の順位で第二の部分から弁済される。
(2)制限基金の各部分において、債権者の間の分配は、確定された債権の額に比例して行う。
(3)船舶の所有者は、基金の分配が行われる前に第1条(1)に規定するいずれかの債権の全部又は一部を既に弁済している場合には、その弁済額につき、基金の分配において当該債権者に代わることができる。ただし、基金が形成された国の法令を適用したとしたならば当該債権者が所有者から弁済を受けることができたとみられる範囲内に限る。
(4)船舶の所有者が第1条(1)に規定するいずれかの債権の全部又は一部の弁済を後に強制されることがあることを証明した場合には、基金が形成された国の裁判所その他の権限のある当局は、その所有者が(3)に定める条件で後に基金に対して自己の権利を行使することを可能にするため十分な金額を暫定的に保留することを命ずることができる。
(5)この条の規定に従い船舶の所有者の責任の限度額を決定する当たり、300トン未満の船舶のトン数は、300トンとみなす。
(6)この条というフランとは、純分1000分の900の金の65.5ミリグラムから成る単位をいう。(1)に規定する金額を責任の制限の主張が行われる国の通貨に換算するに当たつては、その換算は、船舶の所有者が基金を形成し、弁済し、又はその国の法令により弁済に相当するものとされる担保の提供をした日にその通過がこの(6)に定義する単位に対して有する価値に従つて行う。
(7)この条約の適用上、トン数は、次のとおりとする。
汽船その他機関を用いて推進する船舶については、純トン数の決定に当たり機関室の容積として総トン数から控除した容積を純トン数に加えたトン数
その他のすべての船舶については、純トン数
第4条 前条(2)の規定に従うことを条件として、制限基金の形成及び分配に関する規則並びに手続に関するすべての規則については、基金が形成される国の国内法令の定めるところによる。
第5条  
(1)船舶の所有者がこの条約に基づき自己の責任を制限することができる場合において、当該船舶若しくは当該所有者が所有する他の船舶その他の財産が締約国の管轄内で差し押さえられており、又は差押えを免れるため保証その他の担保が提供されるときは、その国の裁判所その他の権限のある当局は、当該所有者がこの条約による自己の責任の限度額に等しい金額について十分な保証その他の担保を既に提供していること及びその提供された保証その他の担保が当該債権者の利益のためにその権利に応じて実際に用いることができるものであることが証明されることを条件として、船舶その他の財産の差押えの解除又は提供された担保の取消しを命ずることができる。
(2)(1)に規定する場合において、保証その他の担保が次に掲げる港において既に提供されているときは、裁判所その他の権限のある当局は、(1)に定める条件が満たされることを条件として、船舶の差押えの解除又は提供された保証その他の担保の取消しを命じなければならない。
(a)債権発生の原因となった事故が生じた港
(b)事故が港で生じたものでない場合には、事故の発生後に最初に寄港した港
(c)債権が人的債権又は積荷の損害に係る債権である場合には、下船港又は荷揚港
(3)(1)及び(2)の規定は、既に提供された保証その他の担保がこの条約による責任の限度額よりも低い金額のものである場合にも、その差額について十分な保証その他の担保が提供されるときは、適用される。
(4)船舶の所有者がこの条約による自己の責任の限度額に等しい金額について保証その他の担保を提供している場合には、その保証その他の担保は、同一の事故から生じた債権で当該所有者がその責任を制限することができるすべてのものの弁済に充てられる。
(5)この条約に基づいて行われる申立てに関する手続及びその申立てを行うべき期間については、申立てが行われる締約国の国内法令の定めるところによる。
第6条  
(1)この条約の適用上、船舶の所有者の責任には、船舶自体の責任を含む。
(2)(3)の規定に従うことを条件として、この条約は、傭船者、船舶の管理人及び船舶の運航者につき、並びに船長、乗組員その他船舶の所有者、傭船者、管理人及び運航者の被用者で職務を行つているものにつき、所有者についてと同様に適用する。もつとも、一の事故から生ずる人的債権及び物的債権に係る所有者及びこれらの者の責任の限度額は、総額において、第3条の規定に従つて決定される金額を超えないものとする。
(3)船長又は乗組員に対して訴えが提起された場合には、これらの者は、債権発生の原因となつた事故がこれらの者自身の過失によるものであるときも、自己の責任を制限することができる。船長又は乗組員が同時に船舶の所有者、共有者、傭船者、管理人又は運航者である場合は、この(3)の規定は、その過失が船長又は乗組員の資格における過失であるときに限り、適用する。
第7条 この条約は、船舶の所有者又は前条の規定に基づき所有者と同一の権利を有するその他の者が、締約国の裁判所において自己の責任を制限し若しくは制限しようとし、又は締約国の管轄内で船舶その他の財産の差押えの解除若しくは保証その他の担保の取消しを求める場合に適用する。
 もつとも、各締約国は、非締約国に対しこの条約の利益の全部若しくは一部を与えず、又は自己の責任を制限しようとする者若しくは第5条の規定に従い船舶その他の財産の差押えの解除若しくは保証その他の担保の取消しを求める者に対し、それらの者がそのための手続をとる時において、それらの者がいずれの締約国にも常居若しくは主たる営業所を有せず若しくは責任の制限、差押えの解除若しくは保証その他の担保の取消しに係る船舶がいずれの締約国の旗をも掲げていない場合に、この条約の利益の全部若しくは一部を与えない権利を有する。
第8条 各締約国は、この条約の適用上海上航行船舶以外のいかなる種類の船舶を海上航行船舶と同様に取り扱うかを決定する権利を留保する。
第9条 この条約は、海事法外交会議の第10回会期に代表を出した国による署名のために開放しておく。
第10条 この条約は、批准されなければならない。批准書は、ベルギー政府に寄託するものとと、同政府は、その寄託を外交上の経路を通じてすべての署名国及び加入国に通報する。
第11条  
(1)この条約は、それぞれ100万総トン以上の船腹を有する少なくとも5の国を含む10以上の国の批准書が寄託された日の後6箇月で効力を生ずる。
(2)この条約は、(1)に定めるところによりこの条約の効力を生じさせることとなる批准書の寄託の日の後にこの条約を批准する各署名国については、その国が批准書を寄託した後6箇月で効力を生ずる。
第12条 海事法外交会議の第10回会期に代表を出さなかつた国は、この条約に加入することができる。
 加入書は、ベルギー政府に寄託するものとし、同政府は、その寄託を外交上の経路を通じてすべての署名国及び加入国に通報する。
 この条約は、加入国については、その加入書の寄託の日の後6箇月で効力を生ずる。ただし、前条(1)に定めるこの条約の効力発生の日前に効力を生ずることはない。
第13条 各締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた後はいつでも、この条約を廃棄する権利を有する。ただし、その廃棄は、ベルギー政府が廃棄の通告を受領した日の後1年を経過するまでは効力を生じないものとし、同政府は、その通告を外交上の経路を通じてすべての署名国及び加入国に通報する。
第14条  
(1)締約国は、この条約の批准若しくはこれへの加入の際に又はその後いつでも、ベルギー政府にあてた書面による通告により、自国が国際関係について責任を有するいずれかの領域についてこの条約を適用することを宣言することができる。この条約は、ベルギー政府がその通告を受領した日の後6箇月で、その領域について適用される。ただし、この条約がその締約国について効力を生ずる日前に適用されることはない。
(2)国際関係について責任を有するいずれかの領域についてこの条約を適用する宣言を(1)の規定に基づいて行つた締約国は、その後いつでも、ベルギー政府にあてた通告により、その領域についてこの条約の適用を終止することを宣言することができる。その廃棄は、ベルギー政府が廃棄の通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。
(3)ベルギー政府は、この条の規定に基づいて受領した通告を外交上の経路を通じてすべての署名国及び加入国に通報する。
第15条 締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた後3年を経過したときは、この条約の改正について検討するため会議を招集することを要請することができる。
 この権利を行使することを希望する締約国は、その旨をベルギー政府に通告するものとし、同政府は、その後6箇月以内に会議を招集する。
第16条 この条約は、これを批准し又はこれに加入する国の間においては、1924年8月25日にブラッセルで署名された海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある規則の統一のための国際条約に代わるものとし、同条約は、それらの国の間においては、効力を失う。

以上の証拠として、全権委員は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。
1957年10月10日ブラッセルで、ひとしく正文であるフランス語及び英語により本書一通を作成した。この本書は、ベルギー政府に寄託しておくものとし、同政府は、その認証謄本を作成する。
署名議定書
(1) いずれの国も、この条約の署名若しくは批准又はこれへの加入の際に、(2)に掲げる留保を行うことができる。この条約に対する他のいかなる留保も、認められない。
(2) 留保は、次のものに限って認められる。
(a) 第1条(1)(c)の規定の適用を排除する権利の留保
(b) 300トン未満の船舶に適用される責任制限の制度を国内法令によつて定める権利の留保
(c) この条約に法令としての効力を与えることにより又はこの条約の規定を国内法令に適した形で国内法令に含めることによりこの条約を実施する権利の留保