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油による汚染を伴う事故の場合における公海上の措置に関する国際条約

  昭和50・5・2・条約  6号  
発効昭和50・5・6・外務省告示 81号  



油による汚染を伴う事故の場合における公海上の措置に関する国際条約をここに公布する。
この条約の締約国は、
海洋及び沿岸に油による汚染の危険をもたらす海難の重大な結果から自国民の利益を保護することの必要性を認め、
そのような状況の下で自国民の利益を保護するための例外的な措置をとることが公海上で必要となることがあり、また、その措置が公海の自由の原則に影響を及ぼすものでないことを確信して、
次のとおり協定した。
 
第1条  
1 締約国は、著しく有害な結果をもたらすことが合理的に予測される海難又はこれに関連する行為の結果としての油による海洋の汚染又はそのおそれから生ずる自国の沿岸又は関係利益に対する重大なかつ急迫した危険を防止し、軽減し又は除去するため必要な措置を公海上でとることができる。
2 もつとも、軍艦又は国によつて所有され若しくは運航される他の船舶で政府の非商業的役務にのみ使用されているものに対しては、この条約に基づくいかなる措置をもとつてはならない。
 
第2条 この条約の適用上、
1 「海難」とは、船舶の衝突、座礁その他の航海上の事故又は船舶内若しくは船舶外のその他の事故であつて、船舶若しくは積荷に対し実質的な損害を与え若しくは与える急迫したおそれがあるものをいう。
2 「船舶」とは、次の物をいう。
(a)あらゆる種類の海上航行船舶
(b)海上に浮いているすべての機器(海底及び海底資源の探査及び開発に使用する設備及び装置を除く。)
3 「油」とは、原油、重油、ディーゼル油及び潤滑油をいう。
4 「関係利益」とは、沿岸国の次のような利益で海難により直接に影響を受け又は脅かされるものをいう。
(a)沿岸、港湾又は河口における海事上の活動(漁業活動を含む。)で関係者の生計のための不可欠な手段であるもの
(b)関係区域の観光資源
(c)沿岸の住民の健康及び関係地域の福祉(水産生物資源及び野生動植物の保存を含む。)
5 「機関」とは、政府間海事協議機関をいう。
 
第3条 沿岸国が第1条の規定に基づいて措置をとる権利を行使する場合には、次の規定が適用される。
(a)沿岸国は、措置をとる前に、海難によつて影響を受ける他の国、特に旗国と協議する。
(b)個人又は法人が沿岸国のとろうとする措置によつて影響を受けると合理的に予測される利益を有する場合には、そのことを知つており又は協議の間に知らされた当該沿岸国は、遅滞なくその個人又は法人に対して当該措置を通告する。沿岸国は、それらの者が提出する意見を考慮する。
(c)沿岸国は、措置をとる前に独立の専門家と協議することができる。独立の専門家は、機関が常時整備する名簿から選定される。
(d)沿岸国は、直ちに措置をとる必要がある極度に緊急の場合には、事前の通告若しくは協議を行なうことなく又はすでに開始した協議を継続することなく、事態の緊急性によつて必要とされる措置をとることができる。
(e)沿岸国は、(d)の措置をとる前又はとつている間に、人命の危険を防止し、遭難者が必要とする援助を与え、並びに船舶の乗組員の帰国を妨げず及び容易にするよう、最善の努力を払う。
(f)第1条の規定に基づいてとつた措置は、関係国、判明した関係者(法人を含む。)及び機関の事務局長に遅滞なく通告する。
 
第4条  
1 前条の専門家名簿は、機関の監督の下で作成しかつ常時整備する。機関は、これに関する必要かつ適当な規則(必要な資格の決定に関する規定を含む。)を制定する。
2 専門家名簿のための指名は、機関の加盟国及びこの条約の締約国が行なうことができる。専門家は、その提供する役務につき、その役務を利用する国から報酬を受ける。
 
第5条  
1 沿岸国が第1条の規定に基づいてとる措置は、実際に被つた損害又は被るおそれがある損害と権衡を失しないものでなければならない。
2 1の措置は、第1条の目的を達成するため合理的に必要とされる限度をこえるものであつてはならず、その目的を達成した場合には、直ちに終止する。その措置は、旗国、第三国又は関係者(法人を含む。)の権利及び利益を必要以上に害するものであつてはならない。
3 1の措置が損害と権衡を失しないものであるかどうかを検討するにあたつては、次のことを考慮する。
(a)その措置をとらない場合に直ちに生ず損害の程度及び可能性
(b)その措置の有効性
(c)その措置によつて生ずることのある損害の程度
 
第6条 締約国は、この条約の規定に反する措置をとり、他の者に損害を与えた場合には、その損害のうち第1条の目的を達成するため合理的に必要とされる限度をこえた措置によつて生じた部分につき補償しなければならない。
 
第7条 この条約のいかなる規定も、別段の定めがある場合を除くほか、本来適用される権利、義務、特権又は免除に影響を及ぼすものではなく、また、締約国又は利害関係のある個人若しくは法人から本来適用される救済手段を奪うものでもない。
 
第8条  
1 締約国間の紛争であつて、第1条の規定に基づいてとられた措置がこの条約の規定に反するものであるかどうかに関するもの、補償が第6条の規定に従つて支払われるべきであるかどうかに関するもの及びそのような補償の額に関するものは、関係締約国間又は当該措置をとつた締約国と個人若しくは法人である請求者との間の協議によつて解決することが不可能である場合には、それらの関係締約国が別段の合意をしない限り、いずれかの関係締約国の請求により、附属書に定める手続に従い、調停又は、調停が成立しなかつたときは、仲裁に付託する。
2 1の措置をとつた締約国は、国内法に基づく救済手段が自国の裁判所において尽くされていないという理由のみによつては、1の規定に基づく調停又仲裁の請求を拒否することができない。
 
第9条  
1 この条約は、1970年12月31日までは署名のため、その後は加入のため、開放しておく。
2 国際連合、いずれかの専門機関若しくは国際原子力機関の加盟国又は国際司法裁判所規程の当事国は、次のいずれかの方法により、この条約の締約国となることができる。
(a)批准、受諾又は承認につき留保を付さないで署名すること。
(b)批准、受諾又は承認を条件として署名した後、批准し、受諾し又は承認すること。
(c)加入すること。
 
第10条  
1 批准、受諾、承認又は加入は、そのための正式の文書を機関の事務局長に寄託することによつて行なう。
2 この条約の改正がすべての締約国について効力を生じた後又はその改正の効力発生に必要なすべての措置がすべての締約国についてとられた後に寄託される批准書、受諾書、承認書又は加入書は、改正された条約に係るものとみなす。
 
第11条  
1 この条約は、15の国の政府が批准、受諾又は承認につき留保を付さないで署名し又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書を機関の事務局長に寄託した日の後90日目の日に、効力を生ずる。
2 この条約は、その後にこれを批准し、受諾し、承認し又は加入する各国については、その国が該当する文書を寄託した後90日目の日に効力を生ずる。
 
第12条  
1 締約国は、この条約が自国について効力を生じた日の後は、いつでもこれを廃棄することができる。
2 廃棄は、機関の事務局長に文書を寄託することによつて行なう。
3 廃棄は、機関の事務局長への廃棄書の寄託の後1年で、又は廃棄書に明記するこれよりも長い期間の後に、効力を生ずる。
 
第13条  
1 いずれかの地域の施政権者としての国際連合又はいずれかの地域の国際関係について責任を有する締約国は、その地域についてこの条約を適用するため、できる限りすみやかにその地域の関係当局と協議し又は他の適当な措置をとるものとし、また、機関の事務局長にあてた通告書により、その地域についてこの条約を適用することをいつでも宣言することができる。
2 この条約は、通告書の受領の日又は通告書に明記する他の日から、その通告書に示す地域について適用する。
3 1の規定に基づいて宣言を行なつた国際連合又は締約国は、この条約がいずれかの地域について適用された日の後は、機関の事務局長にあてた通告書により、通告書に示すその地域に対するこの条約の適用を終止することをいつでも宣言することができる。
4 この条約は、機関の事務局長が通告書を受領した日の後1年で、又は通告書に明記するこれよりも長い期間の後に、その通告書に示す地域に対する適用を終止する。
 
第14条  
1 機関は、この条約の改正のための会議を招集することができる。
2 機関は、締約国の3分の1以上からの要請がある場合には、この条約の改正のための締約国会議を招集する。
 
第15条  
1 この条約は、機関の事務局長に寄託する。
2 機関の事務局長は、次のことを行なう。
(a)署名国又は加入国に対して次の事項を通知すること。
(i) 新たに行なわれた署名又は文書の寄託及びその署名又は寄託の日
(ii) 廃棄書の寄託及びその寄託の日
(iii) 第13条1の規定に基づくいずれかの地域に対するこの条約の適用及び同条4の規定に基づくその終了。この場合において、その適用の開始の日又はその終了の日をそれぞれ明示する。
(b)すべての署名国及びこの条約に加入するすべての国に対し、この条約の認証謄本を送付すること。
 
第16条 この条約が効力を生じたときは、機関の事務局長は、国際連合憲章第102条の規定に従いできる限りすみやかにその本文を登録及び公表のため国際連合事務局に送付する。
 
第17条 この条約は、ひとしく正文である英語及びフランス語により本書一通を作成する。ロシア語及びスペイン語による公定訳文は、作成のうえ、署名済みの原本とともに寄託する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。
1969年11月29日にブラッセルで作成した。
附属書 
最初

第1章 調停

 
第1条 調停手続は、紛争の当事国が別段の決定をしない限り、この章に定める規則に従う。
 
第2条  
1 調停委員会は、いずれか一の当事国が条約第8条の規定に基づき他の当事国に行なつた請求によつて設立される。
2 当事国が提出する調停の請求の文書は、当該紛争を記述した文書及び証拠書類とする。
3 調停手続が二の当事国の間で開始された場合には、当該措置により自国の国民若しくは財産に影響を受けた他の締約国又は同様の措置をとつた沿岸国である他の締約国は、最初に調停手続を開始したいずれの一方の当事国も反対しない限り、双方の当事国に対し書面による通告を行なうことにより、その調停手続に参加することができる。
 
第3条  
1 調停委員会は、当該措置をとつた沿岸国が指名する1人の委員、当該措置により自国の国民又は財産に影響を受けた国が指名する1人の委員及びこれら2人の委員が合意によつて指名する第三の委員の3人で構成するものとし、この第三の委員が調停委員会の議長となる。
2 調停委員は、次条に定める手続に従つてあらかじめ作成された名簿から選定する。
3 調停を請求された一方の当事国がその請求を受けた日から60日以内に自国が選定について責任を有する調停委員の指名を他方の当事国に通告しなかつた場合又は当事国によつて指名されるべき第二の調停委員の指名の日から30日以内に第一及び第二の調停委員が合意により調停委員会の議長を指名することができなかつた場合には、機関の事務局長は、いずれか一方の当事国の請求に応じ、30日以内に必要な指名を行なう。このようにして指名される調停委員会の委員は、2の名簿から選定する。
4 調停委員会の議長は、その指名方法のいかんを問わず、いかなる場合にも、最初に調停手続を開始したいずれか一方の当事国の国籍を有しており又は有していた者であつてはならない。
 
第4条  
1 前条の名簿は、締約国の指名した適格者で構成し、かつ、機関が常時整備する。各締約国は、名簿に記載される4人の者を指名することができる。これらの者は、これを指名する締約国の国籍を有することを要しない。指名は、6年間効力を有するものとし、更新することができる。
2 名簿に記載されている者が死亡し又は辞任した場合には、その者を指名した締約国は、その残任期間について他の者を指名することができる。
 
第5条  
1 調停委員会は、当事国が別段の合意をしない限り、その手続を定める。その手続は、いかなる場合にも、公平に陳述の機会を与えるものでなければならない。調停委員会は、審査に関しては、全会一致で別段の決定をしない限り、1907年10月18日にヘーグで署名された国際紛争平和的処理条約第3章の規定に従う。
2 当事国は、自国と調停委員会との間の仲介者として行動することを任務とする者に調停委員会において自国を代表させる。各当事国は、顧間及び専門家を指名し、その援助を求めることができるものとし、また、有益な証拠を有すると自国が考えるすべての者を尋問することを要求することができる。
3 調停委員会は、締約国の代表者、顧問及び専門家の説明並びにいずれかの者であつてその政府の同意を得て召喚することが有益であると考えられるものの説明を要することができる。
 
第6条 調停委員会の決定は、当事国が別段の合意をしない限り、過半数による議決で行なう。調停委員会は、すべての委員が出席していない場合には、紛争の実質問題について意見を表明してはならない。
 
第7条 当事国は、調停委員会の運営を容易にするものとし、特に、自国の法令に従い、すべての可能な手段を利用して次のことを行なう。
(a)調停委員会に対し必要な文書及び情報を提供すること。
(b)調停委員会が証人又は専門家の尋問及び現場の検証のため自国の領域に入ることができるようにすること。
 
第8条 調停委員会は、紛争事項を明らかにすること、このため調査その他の方法により関連するすべての情報を収集すること及び当事国を調停するように努めることをその任務とする。調停委員会は、紛争を審理した後、当事国に対し、適当であると考える勧告を通知するものとし、かつ、90日以内の期限を定め、その期限までにその勧告を受諾するかどうかについての回答を求める。
 
第9条 勧告には、その理由を付する。勧告の全体又は一部分が調停委員会の全員一致の意見を反映していない場合には、いずれの委員も、別個の意見を表明することができる。
 
第10条 双方の当事国が勧告の通知を受けた後90日以内にいずれか一方の当事国が他方の当事国に対しその勧告を受諾する旨を通知しなかつた場合には、調停は、成立しなかつたものとみなす。調停委員会が第3条3に定める期間内に設立されなかつたとき、又は当事国が別段の合意をしない場合において調停委員会がその議長の指名の日から1年以内に勧告を発しなかつたときも、調停は、成立しなかつたものとみなす。
 
第11条  
1 調停委員会の各委員は、その職務について報酬を受ける。その報酬は、当事国間の合意によつて定めるものとし、各当事国は、同等の額を拠出する。
2 調停委員会の運営に要した一般経費のための拠出金は、1に定める方法と同様の方法で割り当てる。
 
第12条 当事国は、調停手続の間いつでも、他の紛争解決手続によることを合意によつて決定することができる。
最初

第2章 仲裁

 
第13条  
1 仲裁手続は、紛争の当事国が別段の決定をしない限り、この章に定める規則に従う。
2 調停が成立しなかつた場合には、調停の不成立の後180日以内に仲裁の請求を行なうことができる。
 
第14条 仲裁裁判所は、当該措置をとつた沿岸国が指名する1人の仲裁人、当該措置により自国の国民又は財産に影響を受けた国が指名する1人の仲裁人及びこれら2人の仲裁人が合意によつて指名する第三の仲裁人の3人で構成するものとし、この第三の仲裁人が裁判長となる。
 
第15条  
1 第二の仲裁人の指名の時から60日の期間を経過した時に裁判長が指名されていない場合には、機関の事務局長は、いずれか一方の当事国の請求に応じ、さらに60日以内に、第4条の規定に従つてあらかじめ作成された適格者の名簿から選定してその指名を行なう。この名簿は、条約第4条の専門家名簿及び第4条の調停委員名簿とは別個のものとする。もつとも、調停委員名簿と仲裁人名簿とに同一人の氏名を記載することを妨げない。ただし、紛争の調停委員として行動した者を当該紛争の仲裁人として選定することはできない。
2 裁判所の仲裁人を指名する責任を有する一方の当事国が仲裁の請求を受けた日から60日以内にその指名を行なわなかつた場合には、他方の当事は、その旨を機関の事務局長に直接に通告することができる。同事務局長は、60日以内に1の仲裁人名簿から選定して裁判長を指名する。
3 裁判長は、2の指名を受けた後直ちに、仲裁人を指名しなかつた当事国に対し、1に定める方法及び条件と同様の方法及び条件で指名を行なうことを請求する。その当事国が必要な指名を行なわない場合には、裁判長は、機関の事務局長に対し、2に定める形式及び条件で指名を行なうことを請求する。
4 裁判長は、この条の規定に従つて指名される場合には、双方の当事国が合意する場合を除くほか、いずれか一方の当事の国の国籍を有しており又は有していた者であつてはならない。
5 一方の当事国がその指名について責任を有する仲裁人が死亡し又は欠けた場合には、当該一方の当事国は、その死亡し又は欠けた日から60日以内に他の者を代りに指名する。当該一方の当事国が指名を行なわなかつた場合には、仲裁裁判は、残りの仲裁人の下で行なう。裁判長が死亡し又は欠けた場合には前条の規定に従い、また、その死亡し又は欠けた日から60日以内に仲裁裁判所の仲裁人が合意しなかつた場合にはこの条の規定に従い、代りの裁判長を指名する。
 
第16条 仲裁手続が二の当事国の間で開始された場合には、当該措置により自国の国民若しくは財産に影響を受けた他の締約国又は同様の措置をとつた沿岸国である他の締約国は、最初に仲裁手続を開始したいずれの一方の当事国も反対しない限り、双方の当事国に対し書面による通告を行なうことにより、その仲裁手続に参加することができる。
 
第17条 この附属書の規定に基づいて設立された仲裁裁判所は、その手続規則を定める。
 
第18条  
1 仲裁裁判所の手続、開廷の場所及び付託された紛争についての仲裁裁判所の決定は、仲裁人の過半数による議決で行なうものとし、当事国がその指名に責任を有する仲裁人の欠席又は判断の回避は、裁判所が決定を行なうことを妨げるものではない。可否同数の場合には、裁判長の決定するところによる。
2 当事国は、仲裁裁判所の運営を容易にするものとし、特に、自国の法令に従い、すべての可能な手段を利用して次のことを行なう。
(a)仲裁裁判所に対し必要な文書及び情報を提供すること。
(b)仲裁裁判所が証人又は専門家の尋問及び現場の検証のため自国の領域に入ることができるようにすること。
3 一の当事国の欠席は、手続の進行を妨げるものではない。
 
第19条  
1 仲裁裁判所の裁定には、その理由を付する。その裁定は、最終的なものとし、上訴を許さない。当事国は、直ちにその裁定に従うものとする。
2 裁定の解釈及び執行に関して当事国間に生ずる紛争は、いずれか一方の当事国が判断を求めるためその裁定を行なつた仲裁裁判所に、それが不可能な場合には、その判断のためその仲裁裁判所と同様の方式で構成された他の仲裁裁判所に付託することができる。

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