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航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約

【目次】
  昭和45・6・1・条約  5号  
発効昭和45・8・24・外務省告示101号  
航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約をここに公布する。
この条約の当事国は、次のとおり協定した。

第1章 条約の適用範囲

第1条  
1 この条約は、次のものについて適用する。
(a)刑法上の犯罪
(b)航空機若しくはその機内の人若しくは財産の安全を害し若しは害するおそれがある行為(犯罪であるかどうかを問わない。)又は航空機内の秩序及び規律を乱す行為
2 この条約は、第3章の場合を除くほか、締結国において登録された航空機内の者により当該航空機の飛行中に又は当該航空機が公海の水上若しくはいずれの国の領域にも属しない地域の地上にある間に行なわれた犯罪又は行為につき、適用する。
3 この条約の適用上、航空機は、動力が離陸のために作動した時から着陸の滑走が終止する時まで、飛行中のものとみなす。
4 この条約は、軍隊、税関又は警察の役務に使用される航空機については適用しない。
第2条 第4条の規定の適用を妨げることなく、また、航空機又はその機内の人若しくは財産の安全のために必要とされる場合を除くほか、この条約のいかなる規定も、刑罰法規のうち政治的性質を有し又は人種若しくは宗教による差別に基づくものに反する犯罪に対する措置を承認し又は要求するものと解してはならない。

第2章 裁判権

第3条  
1 航空機の登録国は、当該航空機内で行なわれた犯罪及び行為について裁判権を行使する権限を有する。
2 各締約国は、自国において登録された航空機内で行なわれた犯罪につき、登録国として裁判権を設定するために必要な措置をとる。
3 この条約は、国内法に従つて行使される刑事裁判権を排除するものではない。
第4条 登録国でない締約国は、飛行中の航空機に対しては、次の場合においてのみ、その機内で行なわれた犯罪につき刑事裁判権を行使することを目的として干渉することができる。
(a)その犯罪が、当該締約国の領域に対して影響を及ぼすものである場合
(b)その犯罪が、当該締約国の国民若しくは当該締約国に恒久的な居所を有する者により又はそれらの者に対して行なわれた場合
(c)その犯罪が、当該締約国の安全を害するものである場合
(d)その犯罪が、当該締約国において施行されている航空機の飛行又は操縦に関する規則に対する違反である場合
(e)その刑事裁判権の行使が、多数国間の協定に基づく当該締約国の義務の遵守に必要である場合

第3章 機長の権限

第5条  
1 この章の規定は、登録国の上空又は公海若しくはいずれの国の領域にも属しない地域の上空を飛行している航空機内の者が行ない又は行なおうとしている犯罪及び行為については、当該航空機の最後の離陸地点又は次の着陸予定地点が当該登録国以外の国にある場合及び当該航空機がその後その者を乗せたまま当該登録国以外の国の上空を飛行する場合を除くほか、適用しない。
2 第1条3の規定にかかわらず、この章の規定の適用上、航空機は、そのすべての乗降口が乗機の後に閉ざされた時からそれらの乗降口のうちいずれか一が降機のために開かれる時まで、飛行中のものとみなす。この章の規定は、不時着の場合には、いずれかの国の権限のある当局が航空機並びにその機内の人及び財産に関する責任を引き継ぐ時まで、その機内で行なわれた犯罪又は行為について適用する。
第6条  
1 機長は、いずれかの者が第1条1の犯罪又は行為を航空機内で行ない又は行なおうとしていると信ずるに足りる相当な理由がある場合には、その者に対し次の目的に必要な妥当な措置(拘束の措置を含む。)をとることができる。
(a)当該航空機又はその機内の人若しくは財産の安全を保障すること。
(b)当該航空機内の秩序及び規律を維持すること。
(c)この章の規定に基づいてその者を権限のある当局に引き渡し又は降機させることができるようにすること。
2 機長は、自己が拘束する権限を有する者を拘束するため、他の乗組員に対し、援助を命じ又は承認することができるものとし、また、旅客に対しては、援助を要請し又は承認することができるが援助を命ずることはできない。いずれの乗組員又は旅客も、妥当な防止措置が航空機又はその機内の人若しくは財産の安全を保障するため直ちに必要であると信ずるに足りる相当な理由がある場合には、機長の承認を得ることなくその防止措置をとることができる。
第7条  
1 前条の規定に基づいてとつた拘束の措置は、次の場合を除くほか、航空機の着陸地点をこえて継続してはならない。
(a)着陸地点が非締約国の領域内にある場合において、当該非締約国の当局が拘束された者を降機させることを許可しないとき、又は当該拘束の措置が前条1(c)の規定に基づき権限のある当局に対し拘束された者を引き渡すことができるようにするためにとられたものであるとき。
(b)当該航空機が不時着した場合において、機長が権限のある当局に対し拘束された者を引き渡すことができないとき。
(c)拘束された者が拘束されたままさらに運送されることに同意する場合
2 機長は、前条の規定に基づいて拘束された者を航空機に乗せたままいずれかの国の領域内に着陸する場合には、できる限りすみやかに、可能なときはその着陸の前に、その国の当局に対し、当該航空機内に拘束されている者がいる事実及びその拘束の理由を通告する。
第8条  
1 機長は、第6条1(a)又は(b)の規定の適用上必要な限り、航空機内で第1条1(b)の行為を行ない又は行なおうとしていると信ずるに足りる相当な理由がある者を当該航空機が着陸する国の領域内に降機させることができる。
2 機長は、この条の規定に基づいていずれかの者を降機させた国の当局に対し、降機させた事実及び理由を報告する。
第9条  
1 機長は、航空機の登録国の刑法上重大な犯罪であると認める行為を当該航空機内で行なつたと信ずるに足りる相当な理由がある者を、当該航空械が着陸する領域の属する締約国の権限のある当局に引き渡すことができる。
2 機長は、1の規定に基づいて引き渡そうとする者を航空機に乗せたままいずれかの締約国の領域内に着陸する場合には、できる限りすみやかに、可能なときはその着陸の前に、当該締約国の当局に対し、その者を引き渡す意図を有する旨及びその理由を通告する。
3 機長は、この条の規定に基づいて被疑者を引き渡す当局に対し、航空機の登録国の法令上適法に所持する証拠及び資料を提供する。
第10条 機長その他の乗組員、旅客、航空機の所有者若しくは運航者又は運航の受益者は、この条約に基づいてとられた措置については、その対象となつた者の受けた処遇に関する訴松手続において責任を問われない。

第4章 航空機の不法な奪取

第11条  
1 飛行中の航空機内の者が暴力又は暴力による脅迫により当該航空機につき不法に干渉、奪取その他の不当な管理を行ない又は行なおうとしている場合には、締約国は、当該航空機の管理をその適法な機長に回復させ又は保持させるため、あらゆる適当な措置をとる。
2 航空機が着陸する締約国に、1の場合には、当該航空機の旅客及び乗組員ができる限りすみやかに旅行を継続することができるようにするものとし、かつ、占有権を有する者に対し当該航空機及びその貨物を返還する。

第5章 国の権利及び義務

第12条 締約国は、他の締約国において登録された航空機の機長に対し、第8条1の規定に基づいていずれの者をも降機させることを容認する。
第13条  
1 締約国は、機長が第9条1の規定に基づいて引き渡す者を受け取る。
2 締約国は、状況によつて正当であると認める場合には、第11条1の行為の被疑者及びその受け取つた者の所在を確実にするため抑留その他の措置をとる。この措置は、当該締約国の法令に定めるところによるものとするが、刑事訴訟手続又は犯罪人引渡手続を開始するために合理的に必要とする期間に限つて継続することができる。
3 2の規定に基づいて抑留された者は、その国籍国のもよりの適当な代表と直ちに連絡をとるための援助を与えられる。
4 第9条1の規定に基づいていずれかの者を引き渡される締約国又は航空機が第11条1の行為の行なわれた後に領域内に着陸する締約国は、それらの事実について直ちに予備調査を行なう。
5 いずれの国も、この条の規定に基づいていずれかの者を抑留する場合には、航空機の登録国、抑留された者の国籍国及び適当と認めるときはその他の利害関係国に対し、その者が抑留されている事実及びその抑留が正当とされる事情を直ちに通告する。4の予備調査を行なつた国は、その結果をこれらの国に対して直ちに報告するものとし、かつ、自国が裁判権を行使する意図を有するかどうかを明示する。
第14条  
1 第8条1の規定に基づいて降機させられ、第9条1の規定に基づいて引き渡され、又は第11条1の行為を行なつた後に隆機した者が旅行を継続することができず又はそれを希望しない場合において、その者の入国を拒否する着陸国は、その者がその着陸国の国民でなく、また、その着陸国に恒久的な居所を有する者でもないときは、その国の国籍国、その者が恒久的な居所を有する国又はその者が航空機による旅行を開始した国の領域にその者を送還することができる。
2 降機、引渡し、前条2に規定する抑留その他の措置及び送還は、入国又は入国許可に関する当該締約国の法令の適用上、当該締約国の領域への入国許可とはみなされないものとし、また、この条約のいかなる規定も、締約国の国外追放に関する法令に影響を及ぼすものではない。
第15条  
1 第8条1の規定に基づいて降機させられ、第9条1の規定に基づいて引き渡され、又は第11条1の行為を行なつた後に降機した者であつて、旅行を継続することを希望するものは、着陸国の法令により刑事訴訟手続又は犯罪人引渡手続のためその滞在を必要とされる場合を除くほか、できる限りすみやかに、その選択する目的地におもむくことができる。ただし、前条の規定の適用を妨げない。
2 締約国は、自国の領域内で第8条1の規定に基づいて降機させられ若しくは第9条1の規定に基づいて引き渡された者に対し又は自国の領域内で降機した者で第11条1の行為を行なつた疑いがあるものに対し、その保護及び安全のため、同様の状況の下にいる自国民に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。ただし、入国、入国許可、犯罪人引渡し及び国外追放に関する当該締約国の法令の適用を妨げない。

第6章 その他の規定

第16条  
1 締約国において登録された航空機内で行なわれた犯罪は、犯罪人引渡しに関しては、当該犯罪が行なわれた場所のみでなく当該航空機の登録国の領域においても行なわれたものとみなす。
2 1の規定の適用を妨げることなく、この条約のいかなる規定も、犯罪人引渡しの義務を設けるものと解してはならない。
第17条 締約国は、航空機内で行なわれた犯罪に関連して調査若しくは逮捕のための措置をとり又はその他の方法で当該犯罪につき裁判権を行使するにあたり、航行の安全その他の航行上の利益に妥当な考慮を払うものとし、また、航空機、旅客、乗組員又は貨物の不必要な遅延を避けるようにする。
第18条 いずれの国にも登録されていない航空機を運航する共同の航空運送運営組織又は国際運営機関を設立する二以上の締約国は、状況に応じてそのうち一国をこの条約の適用上当該航空機の登録国とみなされるものとして指定するものとし、これを国際民間航空機関に通告する。国際民間航空機関は、その通告をこの条約のすべての当事国に通知する。

第7章 最終規定

第19条 この条約は、第21条の規定に従つて効力を生ずる日まで、その日に国際連合又はその専門機関の加盟国である国による署名のため解放しておく。
第20条  
1 この条約は、署名国により、その憲法上の手続に従つて批准されなければならない。
2 批准書は、国際民間航空機関に寄託する。
第21条  
1 この条約は、12の署名国が批准書を寄託したときは、12番目の批准書の寄託の日の後90日目の日にそれらの署名国の間で効力を生ずる。この条約は、その後に批准する署名国については、その批准書の寄託の日の後90日目の日に効力を生ずる。
2 この条約は、効力を生じたときは、国際民同航空機国が国際連合事務総長に登録する。
第22条  
1 この条約は、効力を生じた後は、国際連合又はその専門機関の加盟国による加入のため開放される。
2 加入は、国際民間航空機関への加入書の寄託によつて行なうものとし、その寄託の日の後90日目の日に効力を生ずる。
第23条  
1 締約国は、国際民間航空機関にあてた通告によつてこの条約を廃棄することができる。
2 廃棄は、国際民間航空機関による廃棄通告の受領の日の後6箇月で効力を生ずる。
第24条  
1 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によつて解決することができないものは、それらの締約国のうちいずれか一国の要請によつて仲裁に付託される。紛争当事国が仲裁の要請の日から6箇月以内に仲裁の組織について合意に達しない場合には、それらの紛争当 事国のいずれの一国も、国際司法裁判所規程に従つて国際司法裁判所に紛争を付託することができる。
2 各国は、この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の時に、1の規定に拘束されないことを宣言することができる。他の締約国は、そのような留保をした締約国との関係において1の規定に拘束されない。
3 2の規定に基づいて留保をした締約国は、国際民間航空機関に対する通告によつていつでもその留保を撤回することができる。
第25条 前条の場合を除くほか、この条約には、留保をすることができない。
第26条 国際民間航空機関は、国際連合及びその専門機関のすべての加盟国に対して次の事項を通告する。
(a)この条約の署名及びその日付
(b)批准書又は加入書の寄託及びその日付
(c)この条約が第21条の規定に従つて効力を生ずる日
(d)廃棄通告の受領及びその日付
(e)第24条の規定に基づいて行なわれる宣言又は通告の受領及びその日付
以上の証拠として、下名の全権委員は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。
1963年9月14日に東京で、英語、フランス語及びスペイン語により真正な3本文を作成した。
この条約は、国際民間航空機関に寄託し、同機関において第19条の規定に従い署名のために開放しておくものとし、同機関は、その認証謄本を国際連合及びその専門機関のすべての加盟国に送付する。