1 削減に関する約束の対象から除外されるものとして扱われる国内助成措置は、貿易を歪めるような影響又は生産に対する影響が全くないか又はあるとしても最小限であるという根本的な要件を満たすものでなければならない。このため、削減に関する約束の対象から除外されるものとして扱われるすべての措置は、次の基本的な基準並びに2から13までに定める政策類型別の基準及び条件に適合するものでなければならない。
(a) 当該助成が、公的な資金(現に徴収されなかった政府の収入を含む。)を用いて実施される政府の施策(消費者からの移転を伴わないものに限る。)を通じて行われること。
(b) 当該助成が、生産者に対して価格支持の効果を有しないこと。
政府による役務の提供に係る施策
2 一般的な役務
この分類に属する政策は、農業又は農村に役務又は利益を提供する施策に関する出費(又は現に徴収されなかった収入)を伴う。当該政策は、生産者又は加工業者に対する直接支払を伴うものであってはならない。そのような施策(次に掲げるものが含まれるが、これらに限られるものではない。)は、1に定める一般的な基準及び、次の(a)から(g)までにおいて政策類型別の条件が規定されている場合には、当該条件を満たすものでなければならない。
(a) 研究(一般的研究、環境に係る施策に関する研究、特定の産品に関する研究に係る施策等)
(b) 有害動植物及び病気の防除(早期警報制度、検疫並びに有害動植物及び病気の根絶その他の一般的な又は産品の特定された有害動植物及び病気の防除の措置等)
(c) 訓練に関する役務(一般的又は専門的訓練に関する便宜等)
(d) 普及及び助言に関する役務(生産者及び消費者に対する情報又は研究結果の提供を容易にする手段の供与等)
(e) 検査に関する役務(一般的検査に関する役務、特定の産品の衛生、安全、格付又は標準化のための検査等)
(f) 市場活動及び販売促進に関する役務(特定の産品に関する市場についての情報、当該産品に関する助言及び販売促進等。ただし、販売価格の引下げ又は買手に対する直接的な経済的利益の供与のために売手により使用され得る目的不特定の出費を除く。)
(g) 基盤整備に関する役務(電力網、道路その他の輸送手段、市場及び港湾に係る施設、水の供給施設、ダム及び排水に係る事業、環境に係る施策に関する基盤整備事業等。この役務に係る出費は、いかなる場合においても、設備の提供又は建設にのみ充てられるものとし、農用地における施設(一般的に利用可能な公益事業に係るものを除く。)の提供に係る補助金に該当するものは含まない。当該出資は、投入される要素若しくは運営費に係る補助金に充てられ又は使用料金の割引のために用いられるものであってはならない。)
3 食糧安全保障のための公的備蓄(注1、注2)
国内法令で定める食糧安全保障に係る施策の不可分の一部を成す産品の備蓄の形成及びその保有に関する出費(又は現に徴収されなかった収入)。当該施策の一部を成す産品の民間備蓄に対する政府の援助もこれに含めることができる。
このような備蓄の量及びその形成は、食糧安全保障のみに関してあらかじめ定められた目標に応じたものとする。備蓄の形成及びその処分の過程は、財政的に透明性のあるものでなければならない。政府による食糧の購入は、その時点における市場価格で行うものとし、食糧安全保障のための備蓄からの売却は、産品及び品質に係るその時点における国内市場価格を下回らない価格で行う。
注1 この3の規定の適用上、透明性のある方法で運用され、かつ、公表された客観的な基準又は指針に従って実施される開発途上国における食糧安全保障のための政府の備蓄に係る施策(食糧安全保障のための食糧の備蓄が管理価格により取得され及び放出される施策を含む。)は、この3の規定に適合するものとみなされる。この場合において、取得価格と外部基準価格との差は、助成合計量に算入される。
注2 この3の規定の適用上、開発途上国において都市及び農村の貧困層の食糧需要を合理的な価格で定期的に満たすことを目的として行われる補助された価格での食糧の供与は、この3の規定に適合するものとみなす。
4 国内における食糧の援助(注)
貧困層に対する国内における食糧の援助の供与に関する出費(又は現に徴収されなかった収入)
食糧の援助を受けるための適格性は、栄養上の目的に関して明確に定められた基準に照らして決定される。この援助は、適格性を有する受益者に対する食糧の直接供与の形態又は当該受益者が市場価格若しくは補助された価格で食糧を購入するための手段の提供の形態で行う。政府による食糧の購入は、その時点における市場価格で行うものとし、援助の資金調達及びその運用は、透明性のあるものとする。
注 この4の規定の適用上、開発途上国において都市及び農村の貧困層の食糧需要を合理的な価格で定期的に満たすことを目的として行われる補助された価格での食糧の供与は、この4の規定に適合するものとみなす。
5 生産者に対する直接支払
生産者に対する直接支払(現物による支払及び現に徴収されなかった収入を含む。)による助成であって削減に関する約束の対象から除外されるものとして扱われるものは、1に定める基本的な基準のほか、6から13までに定める直接支払の個別の類型に係る特定の基準を満たすものでなければならない。6から13までに定める直接支払以外の既存の又は新たな類型の直接支払であって削減の対象から除外されるものとして扱われるものは、1に定める一般的な基準のほか、6の(b)から(e)までに定める基準に適合するものでなければならない。
6 生産に関連しない収入支持
(a) この支払を受けるための適格性は、定められた一定の基準期間における収入、生産者又は土地所有者であるという事実、要素の使用、生産水準その地の明確に定められた基準に照らして決定される。
(b) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。
(c) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において行われる生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。
(d) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において使用される生産要素に関連し又は基づくものであってはならない。
(e) この支払を受けるために、いかなる生産を行うことも要求されてはならない。
7 収入保険及び収入保証に係る施策への政府の財政的な参加
(a) この支払を受けるための適格性は、農業から得られる収入のみを考慮して、過去3年間における若しくは過去5年間のうち収入が最大及び最小の年を除く3年間における総収入(同一又は同様の施策により受けた支払を除く。)の平均の30パーセントに相当する価額又は純収入を用いて算定した同等の価額を超える収入の喪失があることに基づいて決定される。この条件を満たす生産者は、支払を受けるための適格性を有する。
(b) この支払の額は、生産者がこの援助を受けるための適格性を有することとなった年の当該生産者の喪失した収入の70パーセント以上の額を補償するものであってはならない。
(c) この支払の額は、収入にのみ関連するものとする。この額は、生産者により行われる生産の形態若しくは量(家畜の頭数を含む。)、当該生産に係る国内価格若しくは国際価格又は使用される生産要素に関連するものであってはならない。
(d) 生産者がこの7の規定に基づく支払及び8の規定(自然災害に係る救済)に基づく支払を同一の年において受ける場合には、これらの支払の総額は、生産者の損失の総額の100パーセント以上であってはならない。
8 自然災害に係る救済のための支払(直接行われるもの又は収穫についての保険に係る事業への政府の財政的な参加により行われるもの)
(a) この支払を受けるための適格性は、自然災害又はこれに類する災害(病気の発生、有害動植物の大量発生、原子力事故及び当該加盟国の領域における戦争を含む。)が発生し又は発生しつつあることを政府の機関が公式に認めた後にのみ生ずるものとし、過去3年間における又は過去5年間のうち生産が最大及び最小の年を除く3年間における生産の平均の30パーセントを超える生産の損失があることに基づいて決定される。
(b) 災害の発生に伴って行われる支払は、自然災害による収入、家畜又は土地その他の生産要素に係る損失(獣医による家畜の処置に係る出費を含む。)についてのみ行う。
(c) 支払は、当該損失の補填のための総費用を超える額を補償するものであってはならず、また、将来の生産について特定の形態又は量を要件とし又は指定して行うものであってはならない。
(d) 災害の発生中に行われる支払の額は、(b)に規定する損失の更なる発生を防止し又は緩和するために必要な水準を超えるものであってはならない。
(e) 生産者がこの8の規定に基づく支払及び7の規定(収入保険及び収入保証に係る施策)に基づく支払を同一の年において受ける場合には、これらの支払の総額は、生産者の損失の総額の100パーセント以上であってはならない。
9 生産者の廃業に係る施策による構造調整援助
(a) この支払を受けるための適格性は、市場性のある農産品の生産に従事する者の廃業又は農業以外の職業への転業を容易にするための施策において明確に定められた基準に照らして決定される。
(b) 支払は、受益者が市場性のある農産品の生産を完全かつ恒久的に廃業することを条件として行う。
10 資源の使用の中止に係る施策による構造調整援助
(a) この支払を受けるための適格性は、市場性のある農産品の生産についての土地その他の資源(家畜を含む。)の使用の中止のための施策において明確に定められた基準に照らして決定される。
(b) 支払は、市場性のある農産品の生産について土地の使用を少なくとも3年間中止すること及び、家畜については、とさつ又は完全かつ恒久的に処分することを条件として行う。
(c) 支払は、当該土地その他の資源を市場性のある農産品の生産を伴う代替的な使用に供することを要件とし又はそのような使用の方法を指定して行うものであってはならない。
(d) 支払は、引き続き生産の用に供される土地その他の資源を使用して行われる生産の形態若しくは量又は当該生産に係る国内価格若しくは国際価格に関連するものであってはならない。
11 投資援助による構造調整援助
(a) この支払を受けるための適格性は、生産者の活動に関し客観的に明らかにされた構造上の不利な状況に応じて経済的及び物理的な構造調整を行うことを援助するための政府の施策において明確に定められた基準に照らして決定される。このような施策に係る適格性は、農用地の再私有化のための明確に定められた政府の施策に基づいて決定することもできる。
(b) いずれの年におけるこの支払の額も、(e)に規定する場合を除くほか、基準期間後のいずれかの年において生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。
(c) いずれの年におけるこの支払の額も、基準期間後のいずれかの年において行われる生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。
(d) 支払は、当該支払に係る投資の実現のために必要な期間についてのみ行う。
(e) 支払は、受益者に特定の産品を生産しないことを要求する場合を除くほか、受益者に対し特定の農産品の生産を義務付け又は何らかの方法で指定して行うものであってはならない。
(f) 支払は、構造上の不利な状況についての補償のために必要な額に限定して行う。
12 環境に係る施策による支払
(a) この支払を受けるための適格性は、明確に定められた環境又は保全に係る政府の施策の一部として決定されるものとし、当該政府の施策に定める具体的な条件(生産方法又は生産に投入される要素に関連するものを含む。)が満たされることによって生ずる。
(b) 支払の額は、政府の施策に従うことに伴う追加の費用又は収入の喪失に限定されるものとする。
13 地域の援助に係る施策による支払
(a) この支払を受けるための適格性は、不利な地域の生産者のみが有する。そのような地域は、経済上及び行政上の明確な同一性を有する明確に指定された地理的に連続する区域であって、法令において明確に規定される中立的かつ客観的な基準(当該地域の困難が一時的な事情にとどまらない事情から生ずることを示すもの)に照らして不利であると考えられるものでなければならない。
(b) いずれの年におけるこの支払の額も、基準期間後のいずれかの年において生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。ただし、当該生産の削減のために行う支払については、この限りでない。
(c) いずれの年におけるこの支払の額も、基準期間後のいずれかの年において行われる生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。
(d) 支払は、適格性を有する地域の生産者のみが受けることができるものとし、当該地域のすべての生産者が受けることができるものとする。
(e) 生産要素に関連する支払は、当該要素が一定の水準を超える場合には、逓減的に行う。
(f) 支払の額は、所定の地域において農業生産を行うことに伴う追加の費用又は収入の喪失に限定される。