実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約
平成元・10・3・条約 7号
発効平成元・10・26・外務省告示514号
実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約をここに公布する。
締約国は、実演家、レコード製作者及び放送機関の権利を保護することを希望して、
次のとおり協定した。
第1条 この条約に基づいて与えられる保護は、文学的及び美術的著作物の著作権の保護に変更を加えるものではなく、また、いかなる影響も及ぼすものではない。したがって、この条約のいずれの規定も、これらの著作権の保護を害するものと解することはできない。
第2条
1 この条約の適用上、内国民待遇とは、保護が要求される締約国の国内法によって与えられる次の待遇をいう。
(a)当該締約国の国民である実演家に対し、当該締約国の領域において行われ、放送され又は最初に固定された実演に関して与えられる待遇
(b)当該締約国の国民であるレコード製作者に対し、当該締約国の領域において最初に固定され又は最初に発行されたレコードに関して与えられる待遇
(c)当該締約国の領域に主たる事務所を有する放送機関に対し、その領域にある送信機から送信される放送に関して与えられる待遇
2 内国民待遇は、この条約において明示的に保障する保護及び明示的に定める制限に従うものとする。
第3条 この条約の適用上、
(a)「実演家」とは、俳優、歌手、演奏家、舞踊家その他文学的又は美術的著作物を上演し、歌唱し、口演し、朗詠し若しくは演奏し又はその他の方法によって実演する者をいう。
(b)「レコード」とは、実演の音その他の音の専ら聴覚的な固定物をいう。
(c)「レコード製作者」とは、実演の音その他の音を最初に固定した自然人又は法人をいう。
(d)「発行」とは、レコードの複製物を相当な数量で公衆に提供することをいう。
(e)「複製」とは、固定物の複製物を作成することをいう。
(f)「放送」とは、公衆によって受信されることを目的とする無線による音の送信又は影像及び音の送信をいう。
(g)「再放送」とは、放送機関が他の放送機関の放送を同時に放送することをいう。
第4条 締約国は、次の場合のいずれかに該当する場合には、実演家に対して内国民待遇を与える。
(a)実演が他の締約国において行われる場合
(b)実演が次条の規定に基づいて保護されるレコードに収録される場合
(c)レコードに固定されていない実演が第6条の規定に基づいて保護される放送によって送られる場合
第5条
1 締約国は、次の場合のいずれかに該当する場合には、レコード製作者に対して内国民待遇を与える。
(a)レコード製作者が他の締約国の国民である場合(国籍の基準)
(b)音の最初の固定が他の締約国において行われた場合(固定の基準)
(c)レコードが他の締約国において最初に発行された場合(発行の基準)
2 非締約国において最初に発行されたレコードがその最初の発行の日から30日以内に締約国においても発行されたとき(同時発行)は、そのレコードは、当該締約国において最初に発行されたものとみなす。
3 締約国は、国際連合事務総長に寄託する通告により、発行の基準又は固定の基準のいずれかを適用しない旨を宣言することができる。この通告は、批准、受諾若しくは加入の時に又はその後いつでも寄託することができる。もっとも、批准、受諾又は加入の後に寄託する場合には、通告は、その寄託の後6箇月で効力を生ずる。
第6条
1 締約国は、次の場合のいずれかに該当する場合には、放送機関に対して内国民待遇を与える。
(a)放送機関の主たる事務所が他の締約国にある場合
(b)放送が他の締約国にある送信機から送信された場合
2 締約国は、国際連合事務総長に寄託する通告により、放送機関の主たる事務所が他の締約国にあり、かつ、放送が当該他の締約国にある送信機から送信された場合にのみ放送に保護を与える旨を宣言することができる。この通告は、批准、受諾若しくは加入の時に又はその後いつでも寄託することができる。もっとも、批准、受諾又は加入の後に寄託する場合には、通告は、その寄託の後6箇月で効力を生ずる。
第7条
1 この条約によって実演家に与えられる保護は、次の行為を防止することができるものでなければならない。
(a)実演家の承諾を得ないでその実演を放送し又は公衆に伝達すること(放送又は公衆への伝達に利用される実演が、それ自体既に放送されたものである場合及び固定物から行われるものである場合を除く。)。
(b)実演家の承諾を得ないでその固定されていない実演を固定すること。
(c)次に掲げる場合に、実演家の承諾を得ないでその実演の固定物を複製すること。
(i)最初の固定自体が実演家の承諾を得ないで行われたとき。
(ii)実演家が承諾した目的と異なる目的のために複製が行われるとき。
(iii)最初の固定が第15条の規定に基づいて行われた場合において、同条に掲げる目的と異なる目的のために複製が行われるとき。
2
(1)実演家が放送を承諾した場合における再放送、放送のための固定及びそのような固定物の放送のための複製に対する保護は、保護が要求される締約国の国内法の定めるところによる。
(2)放送のために作成された固定物の放送機関による使用についての条件は、保護が要求される締約国の国内法に従って定める。
(3)(1)及び(2)の国内法は、実演家が放送機関との関係を契約によって定めることを妨げてはならない。
第8条 締約国は、国内法令により、同一の実演に二以上の実演家が参加する場合におけるその権利の行使についてこれらの実演家を代表する者を決定する方法を定めることができる。
第9条 締約国は、国内法令により、文学的又は美術的著作物を実演しないが芸能的な性質を有する行為を行う者に対してこの条約に定める保護を及ぼすことができる。
第10条 レコード製作者は、そのレコードを直接又は間接に複製することを許諾し又は禁止する権利を享有する。
第11条 締約国は、レコードに関するレコード製作者若しくは実演家又はその双方の権利の保護の条件として国内法により一定の方式に従うことを要求する場合において、発行されたレコードの複製物であって市販されているもののすべて又はその容器に、保護が求められていることが明らかになるような適当な方法で最初の発行の年とともに[P]の記号が表示されているときは、その要求が満たされたものと認める。もっとも、その表示には、当該複製物又はその容器にレコード製作者又はレコード製作者の許諾を得た者がその名、商標その他の適当な表示によって明らかにされていないときはレコード製作者の権利を保有する者の名を含めるものとし、当該複製物又はその容器に主たる実演家が明らかにされていないときは固定が行われた国において当該実演家の権利を保有する者の名も含めるものとする。
第12条 商業上の目的のために発行されたレコード又はその複製物が放送又は公衆への伝達に直接使用される場合には、単一の衡平な報酬が、使用者により実演家若しくはレコード製作者又はその双方に支払われる。当該報酬の配分の条件については、当事者間に合意がない場合には、国内法において定めることができる。
第13条 放送機関は、その放送に関し、次の事項を許諾し又は禁止する権利を享有する。
(a)放送の再放送
(b)放送の固定
(c)次の複製
(i)放送機関の承諾を得ないで作成された放送の固定物の複製
(ii)第15条の規定に基づいて作成された放送の固定物の複製であって、同条に掲げる目的と異なる目的のために行われるもの
(d)料金を支払うことによって公衆が入場することができる場所で行われるテレビジョン放送の公衆への伝達。ただし、この権利を行使する条件は、当該権利の保護が要求される国の国内法の定めるところによる。
第14条 この条約に基づいて与えられる保護期間は、次に掲げる年の終わりから20年よりも短くてはならない。
(a)レコード及びレコードに収録された実演に関しては、固定が行われた年
(b)レコードに収録されていない実演に関しては、実演が行われた年
(c)放送に関しては、放送が行われた年
第15条
1 締約国は、国内法令により、次の行為については、この条約が保障する保護の例外を定めることができる。
(a)私的使用
(b)時事の事件の報道に伴う部分的使用
(c)放送機関が自己の手段により自己の放送のために行う一時的固定
(d)教育目的又は学術的研究目的のためのみの使用
2 1の規定にかかわらず、締約国は、国内法令により、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関しては、文学的及び美術的著作物の著作権の保護に関して国内法令に定める制限と同一の種類の制限を定めることができる。ただし、強制許諾は、この条約に抵触しない限りにおいてのみ定めることができる。
第16条
1 いずれの国も、この条約の締約国となった時に、この条約に定めるすべての義務を負い、及びすべての利益を享受する。ただし、締約国は、国際連合事務総長に寄託する通告により、いつでも、次のことを宣言することができる。
(a)第12条に関し、
(i)同条の規定を適用しないこと。
(ii)一定の使用について同条の規定を適用しないこと。
(iii)他の締約国の国民でないレコード製作者のレコードについて同条の規定を適用しないこと。
(iv)他の締約国の国民であるレコード製作者のレコードについて同条に定める保護を与える場合に、その保護の範囲及び期間を、自国民によって最初に固定されたレコードについて当該他の締約国が与える保護の範囲及び期間に制限すること。ただし、自国における受益者と同様の者に対して当該他の締約国が保護を与えていないという事実をもって、保護の範囲の相違があるものと解してはならない。
(b)第13条に関し、同条(d)の規定を適用しないこと。締約国がこの宣言を行う場合には、他の締約国は、当該宣言を行う締約国に主たる事務所を有する放送機関に対し、同条(d)に規定する権利を与える義務を負わない。
2 1の通告が批准書、受諾書又は加入書の寄託の日の後に行われる場合には、宣言は、その通告の寄託の後6箇月で効力を生ずる。
第17条 1961年10月26日において固定の基準のみに基づいてレコード製作者に保護を与えている国は、批准、受諾又は加入の時に国際連合事務総長に寄託する通告により、第5条の規定の適用上固定の基準のみを用い、並びに前条1(a)の(iii)及び(iv)の規定の適用上国籍の基準の代わりに固定の基準を用いる旨を宣言することができる。
第18条 第5条3、第6条2、第16条1又は前条の規定に基づく通告を寄託した国は、国際連合事務総長に新たな通告を寄託することにより、先の通告の範囲を縮小し又はその通告を撤回することができる。
第19条 この条約のいかなる規定にもかかわらず、実演家がその実演の影像の固定物又は影像及び音の固定物に収録することを承諾したときは、その時以後第7条の規定は、適用しない。
第20条
1 この条約は、いずれかの締約国についてこの条約が効力を生ずる日前に当該締約国において取得された権利を害するものではない。
2 いずれの締約国も、自国についてこの条約が効力を生ずる日前に行われた実演若しくは放送又はその日前に固定されたレコードについては、この条約を適用する義務を負わない。
第21条 この条約に定める保護は、実演家、レコード製作者及び放送機関について別途確保されるいかなる保護も、害するものではない。
第22条 締約国は、相互間で特別の取極を行う権利を留保する。ただし、その取極は、この条約によって与えられる権利よりも広い権利を実演家、レコード製作者若しくは放送機関に与えるものであるか又はこの条約に抵触する規定を有しないものでなければならない。
第23条 この条約は、国際連合事務総長に寄託する。この条約は、1962年6月30日まで、実演家、レコード製作者及び放送機関の国際的保護に関する外交会議に招請された国であって万国著作権条約の締約国又は文学的及び美術的著作物保護国際同盟の構成国であるものによる署名のために開放しておく。
第24条
1 この条約は、署名国によって批准され又は受諾されなければならない。
2 この条約は、前条の会議に招請された国及び国際連合の加盟国(いずれについても、万国著作権条約の締約国又は文学的及び美術的著作物保護国際同盟の構成国である場合に限る。)による加入のために開放しておく。
3 批准、受諾又は加入は、批准書、受諾書又は加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
第25条
1 この条約は、6番目の批准書、受諾書又は加入書の寄託の日の後3箇月で効力を生ずる。
2 その後は、この条約は、批准書、受諾書又は加入書を寄託した国について、その寄託の日の後3箇月で効力を生ずる。
第26条
1 締約国は、自国の憲法に従い、この条約の適用を確保するために必要な措置をとる。
2 各国は、批准書、受諾書又は加入書の寄託の時に、国内法によりこの条約を実施することができる状態になっていなければならない。
第27条
1 いずれの国も、批准、受諾若しくは加入の時に又はその後いつでも、国際連合事務総長にあてた通告により、自国がその国際関係について責任を有する領域の全部又は一部(当該領域に万国著作権条約又は文学的及び美術的著作物の保護に関する国際条約が適用されている場合に限る。)について、この条約を適用する旨を宣言することができる。この通告は、その受領の日の後3箇月で効力を生ずる。
2 第5条3、第6条2、第16条1、第17条及び第18条の通告は、1に規定する領域の全部又は一部についてその適用を及ぼすことができる。
第28条
1 締約国は、自国について又は前条に規定する領域の全部若しくは一部についてこの条約を廃棄することができる。
2 廃棄は、国際連合事務総長にあてた通告によって行うものとし、通告の受領の日の後12箇月で効力を生ずる。
3 締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた日から5年の期間が満了するまでは、廃棄の権利を行使することができない。
4 締約国は、万国著作権条約の締約国又は文学的及び美術的著作物保護国際同盟の構成国のいずれでもなくなった時以後は、この条約の締約国でなくなる。
5 この条約は、前条に規定する領域について、その領域に万国著作権条約又は文学的及び美術的著作物の保護に関する国際条約のいずれもが適用されなくなった時以後は、適用されない。
第29条
1 この条約の効力発生の時から5年を経過した後は、いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた通告により、この条約を改正するための会議の招集を要請することができる。国際連合事務総長は、その要請をすべての締約国に通報する。国際連合事務総長による通報の日の後6箇月以内に締約国の2分の1以上の国が当該要請に同意する旨を同事務総長に通告する場合には、同事務総長は、この旨を国際労働事務局長、国際連合教育科学文化機関事務局長及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局長に通報するものとし、これらの事務局長は、第32条に規定する政府間委員会と協力して改正会議を招集する。
2 この条約の改正の採択には、改正会議に出席した国の3分の2以上の多数による賛成票を必要とする。もっとも、その多数には、改正会議の時におけるこの条約の締約国の3分の2以上を含むことを条件とする。
3 この条約の全部又は一部を改正する条約が採択された場合には、その改正条約に別段の定めがない限り、
(a)批准、受諾又は加入のためのこの条約の開放は、当該改正条約が効力を生ずる日に終止する。
(b)この条約は、当該改正条約を締結していない締約国の間の関係において又はこれらの締約国との関係において、引き続き効力を有する。
第30条 この条約の解釈又は適用に関して二以上の締約国間に生ずる紛争で交渉によって解決されないものは、紛争当事国が他の解決方法について合意する場合を除くほか、いずれか一の紛争当事国の要請により、決定のため国際司法裁判所に付託される。
第31条 第5条3、第6条2、第16条1及び第17条の規定の適用を妨げることなく、この条約には、いかなる留保も付することができない。
第32条
1 次の任務を有する政府間委員会を設置する。
(a)この条約の適用及び運用に関する問題を研究すること。
(b)この条約の改正に関し、提案を収集し及び文書を準備すること。
2 政府間委員会は、衡平な地理的配分に十分な考慮を払って選出される締約国の代表者から成る。政府間委員会の委員の数は、締約国の数が12以下のときは6人、13以上18以下のときは9人、19以上のときは12人とする。
3 政府間委員会は、すべての締約国の過半数によってあらかじめ承認された規則に従い、国際労働事務総長、国際連合教育科学文化機関事務局長及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局長が準備し、それぞれ1票を有する締約国間で行われる選挙により、この条約の効力発生の日の後12箇月で構成される。
4 政府間委員会は、議長及び役員を選出する。政府間委員会は、その手続規則を定める。この規則は、特に、政府間委員会の将来の運営について及び締約国間における交替を確保するような将来の委員の選出方法について規定するものとする。
5 政府間委員会の事務局は、国際労働事務局、国際連合教育科学文化機関及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局の職員であってこれらの三の機関の事務局長によりそれぞれ指名されたもので構成する。
6 政府間委員会の会合は、委員の過半数が必要と認めるときはいつでも招集されるものとし、国際労働事務局、国際連合教育科学文化機関及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局の本部において順次開催される。
7 政府間委員会の委員の費用は、当該委員の政府が負担する。
第33条
1 この条約は、ひとしく正文である英語、フランス語及びスペイン語により作成する。
2 更に、ドイツ語、イタリア語及びポルトガル語によりこの条約の公定訳文を作成する。
第34条
1 国際連合事務総長は、第23条の会議に招請された国及び国際連合の加盟国に対し、また、国際労働事務局長、国際連合教育科学文化機関事務局長及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局長に対し、次の事項を通報する。
(a)批准書、受諾書又は加入書の寄託
(b)この条約の効力発生の日
(c)この条約に規定するすべての通告、宣言又は通報
(d)第28条の4及び5に定める事態の発生
2 国際連合事務総長は、また、国際労働事務局長、国際連合教育科学文化機関事務局長及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局長に対し、第29条の規定に従って同事務総長に通告された要請及びこの条約の改正に関して締約国から受領した通告を通報する。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。
1961年10月26日にローマで、英語、フランス語及びスペイン語により本書1通を作成した。認証謄本は、国際連合事務総長が、第23条の会議に招請されたすべての国及び国際連合の加盟国に対し、また、国際労働事務局長、国際連合教育科学文化機関事務局長及び文学的及び美術的著作物保護国際同盟事務局長に対して送付する。
