刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法
昭和38・7・12・法律138号
第1条 刑事事件における被告人以外の者の所有に属する物の没収手続については、当分の間、この法律の定めるところによる。
第2条 検察官は、公訴を提起した場合において、被告人以外の者(以下「第三者」という。)の所有に属する物(被告人の所有に属するか第三者の所有に属するかが明らかでない物を含む。以下同じ。)の没収を必要と認めるときは、すみやかに、その第三者に対し、書面により、次の事項を告知しなければならない。
1.被告事件の係属する裁判所
2.被告事件名及び被告人の氏名
3.没収すべき物の品名、数量その他その物を特定するに足りる事項
4.没収の理由となるべき事実の要旨
5.被告事件の係属する裁判所に対し、被告事件の手続への参加を申し立てることができる旨
6.参加の申立てをすることができる期間
7.被告事件について公判期日が定められているときは、公判期日
2 第三者の所在がわからないため、又はその他の理由によつて、前項の告知をすることができないときは、検察官は、同項に掲げる事項を官報及び新聞紙に掲載し、かつ、検察庁の掲示場に14日間掲示して公告しなければならない。ただし、価額が5千円に満たないことが明らかな物については、検察庁の掲示場における掲示をもつて足りる。
3 検察官は、前2項の規定による告知又は公告をしたときは、これを証明する書面を裁判所に提出しなければならない。
第3条 没収されるおそれのある物を所有する第三者は、第一審の裁判があるまで(略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判があつたときは、正式裁判の請求をすることのできる期間が経過するまでとし、この場合において、正式裁判の請求があつたときは、さらに通常の規定による第一審の裁判があるまでとする。以下同じ。)、被告事件の係属する裁判所に対し、書面により、被告事件の手続への参加を申し立てることができる。ただし、
前条第1項又は第2項の規定による告知又は公告があつたときは、告知又は公告があつた日から14日以内に限る。
2 検察官が前条第1項又は第2項の規定により告知し又は公告した裁判所が被告事件を移送した場合において、その裁判所に参加の申し立てがあつたときは、申立てを受けた裁判所は、被告事件の移送を受けた裁判所にその申立ての書面を送付しなければならない。この場合において、その書面が送付されたときは、参加の申立ては、はじめから、被告事件の移送を受けた裁判所に対してされたものとみなす。
3 裁判所は、参加の申立てが法令上の方式に違反し、若しくは第1項に規定する期間の経過後にされたとき、又は没収すべき物が申立人の所有に属しないことが明らかであるときは、参加の申立てを棄却しなければならない。ただし、第1項ただし書に規定する期間内に参加の申立てをしなかつたことが、申立人の責めに帰することのできない理由によると認めるときは、第一審の裁判があるまで参加を許すことができる。
4 前項の場合を除き、裁判所は、申立人の参加を許さなければならない。ただし、没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加の申立てを棄却することができる。
5 裁判所は、参加を許した場合において、没収すべき物が参加を許された者(以下「参加人」という。)の所有に属しないことが明らかになつたときは、参加を許す裁判を取り消さなければならない。没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加を許す裁判を取り消すことができる。
6 参加に関する裁判は、申立人又は参加人、検察官及び被告人又は弁護人の意見をきき、決定でしなければならない。検察官又は申立人若しくは参加人は、参加の申立てを棄却する決定又は参加を許す裁判を取り消す決定(第4項ただし書又は前項後段の規定による決定を除く。)に対し、即時抗告をすることができる。
7 参加の取下げは、書面でしなければならない。ただし、公判期日においては、口頭ですることができる。
第4条 参加人は、この法律に特別の規定がある場合のほか、没収に関し、被告人と同一の訴訟上の権利を有する。
2 前項の規定は、参加人を証人として取り調べることを妨げるものではない。
第5条 参加人は、公判期日に出頭することを要しない。
2 裁判所は、参加人の所在がわからないときは、公判期日の通知その他書類の送達をすることを要しない。
3 裁判所は、公判期日に出頭した参加人に対し、没収の理由となるべき事実の要旨、その参加前の公判期日における審理に関する重要な事項その他参加人の権利を保護するために必要と認める事項を告げたうえ、没収について陳述する機会を与えなければならない。
第6条 参加人の参加は、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)
第320条から
第328条までの規定の適用に影響を及ぼさない。
2 裁判所は、刑事訴訟法
第320条第2項本文、
第326条又は
第327条の規定により証拠とすることができる書面又は供述を取り調べた場合において、参加人がその書面又は供述の内容となつた供述をした者を証人として取り調べることを請求したときは、その権利の保護に必要と認める限り、これを取り調べなければならない。参加人の参加前に取り調べた証人について、参加人がさらにその取調べを請求したときも、同様とする。
第7条 第三者の所有に属する物については、その第三者が参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
1.
第2条第1項又は第2項の規定による告知又は公告があつた場合において、
第3条第1項ただし書に規定する期間が経過したとき(没収すべき物が申立人若しくは参加人の所有に属しないことが明らかであることを理由とし、又は没収をすることができないか若しくはこれを必要としない旨の検察官の意見に基づいて、参加の申立てが棄却され、又は参加を許す裁判が取り消された場合を除く。)。
2.参加の申立てが法令上の方式に違反したため棄却されたとき。
3.参加の取下げがあつたとき。
第8条 原審における参加人は、上訴審においても、参加人としての地位を失わない。
2 参加人が上訴をしたときは、検察官及び被告人が上訴をせず、又は上訴の放棄若しくは取下げをした場合においても、原審の裁判中没収に関する部分は、確定しない。
4 前2項の規定は、略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判に対して参加人が正式裁判の請求をした場合に準用する。
第9条 第三者が法人であるときは、その代表者が、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人が、訴訟行為についてこれを代表する。
2 第三者が意思能力を有しないときは、その法定代理人(親権者が2人あるときは、各自)が、訴訟行為についてこれを代理する。
3 刑事訴訟法
第27条第2項並びに
第29条第1項及び第3項の規定は、この法律の規定により被告事件の手続に関与する第三者に準用する。この場合において、同法
第29条第1項中「前2条」とあるのは、「刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法第9条第1項又は第2項」と読み替えるものとする。
第10条 この法律の規定により被告事件の手続に関与する第三者は、弁護士の中から代理人を選任し、これに訴訟行為を代理させることができる。
2 代理人の選任は、審級ごとに、代理人と連署した書面を差し出してしなければならない。
3 代理人は、参加人の書面による同意がなければ、参加の取下げ、正式裁判の請求の取下げ又は上訴の放棄若しくは取下げをすることができない。
第11条 没収の裁判をしたときは、被告人に負担させるものを除き、参加によつて生じた訴訟費用を参加人に負担させることができる。参加を許す裁判を取り消したとき、又は参加の取下げがあつたときも、同様とする。
2 前項前段の規定により参加人に訴訟費用を負担させるときは、没収の裁判と同時に、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、没収の裁判について上訴があつたときに取り、不服を申し立てることができる。
3 刑事訴訟法
第181条第3項及び
第368条から
第371条までの規定は、参加人又は参加人であつた者に準用する。この場合において、同法
第369条中「弁護人であつた者」とあるのは、「代理人であつた者」と読み替えるものとする。
第12条 第三者の所有に属する物を没収する手続については、この法律に特別の規定があるもののほか、刑事訴訟法による。
第13条 法律上没収することのできない物について没収の裁判が確定したときは、その物の所有者で、自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたものは、没収の確定裁判を知つた日から14日以内に限り、没収の裁判をした裁判所に対し、その裁判の取消しを請求することができる。ただし、没収の裁判が確定した日から5年を経過したときは、その請求をすることができない。
2 前項の請求は、その理由となる事実を明示した趣意書を差し出してしなければならない。
3 第1項の規定による請求が法令上の方式に違反し、若しくは同項に規定する期間の経過後にされたとき、請求人がその責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたと認められないとき、又は没収された物が請求人の所有に属しないものであつたことが明らかであるときは、請求人及び検察官の意見をきき、決定で請求を棄却しなければならない。請求人は、この決定に対し、即時抗告をすることができる。
4 前項の場合を除き、請求が理由がないときは、判決でこれを棄却し、理由があるときは、判決で没収の裁判を取り消さなければならない。請求人又は検察官は、この判決に対し、上訴をすることができる。
5 裁判所は、趣意書に包含された事項について、請求人及び検察官に陳述をさせ、並びに請求人若しくは検察官の申立てにより又は職権で、必要と認める証換の取調べをしなければならない。請求人が公判期日に出頭しない場合においても、その不出頭について正当な理由がないと認めるときは、その期日の公判手続を行ない、又は判決の宣告をすることができる。
6 請求を棄却したときは、訴訟費用を請求人に負担させることができる。請求の取下げがあつたときも、同様とする。
8 前項の規定にかかわらず、請求に関する裁判手続においては、請求人を証人として取り調べ、又は公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、若しくは公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることができる。
9 没収の裁判が取り消されたときは、刑事補償法(昭和25年法律第1号)に定める没収の執行による補償の例により、補償を行なう。
