罹災都市借地借家臨時処理法
昭和21・8・27・法律 13号
改正平成3・10・4・法律 90号−−
改正平成16・12・1・法律147号−−
第1条 この法律において、罹災建物とは、空襲その他今次の戦争に因る災害のため滅失した建物をいひ、疎開建物とは、今次の戦争に際し防空上の必要により除去された建物をいひ、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいひ、借地とは、借地権の設定された土地をいひ、借家とは、賃借された建物をいふ。
第2条 罹災建物が滅失した当時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地に借地権の存しない場合には、その土地の所有者に対し、この法律施行の日から2箇年以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な借地条件で、その土地を賃借することができる。但し、その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき、又は他の法令により、その土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合に、その許可がないときは、その申出をすることができない。
2 土地所有者は、前項の申出を受けた日から3週間以内に、拒絶の意思を表示しないときは、その期間満了の時、その申出を承諾したものとみなす。
3 土地所有者は、建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由があるのでなければ、第1項の申出を拒絶することができない。
4 第三者に対抗することのできない借地権及び臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明かな借地権は、第1項の規定の適用については、これを借地権でないものとみなす。
第3条 前条第1項の借主は、罹災建物の敷地又はその換地に借地権の存する場合には、その借地権者(借地権者が更に借地権を設定した場合には、その借地権の設定を受けた者)に対し、同項の期間内にその者の有する借地権の譲渡の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な対価で、その借地権の譲渡を受けることができる。この場合には、
前条第1項但書及び第2項乃至第4項の規定を準用する。
第4条 前条の規定により賃借権が譲渡された場合には、その譲渡について、賃貸人の承諾があつたものとみなす。この場合には、譲受人は、譲渡を受けたことを、直ちに賃貸人に通知しなければならない。
第5条 第2条の規定により設定された賃借権の存続期間は、借地借家法(平成3年法律第90号)
第3条の規定にかかわらず、10年とする。ただし、建物が、この期間満了前に朽廃したときは、賃借権は、これによつて消滅する。
2 当事者は、前項の規定にかかはらず、その合意により、別段の定をすることができる。但し、存続期間を10年未満とする借地条件は、これを定めないものとみなす。
第6条 第2条の規定による賃借権の設定又は
第3条の規定による借地権の譲渡があつた場合において、その土地を、権原により現に耕作の目的で使用する者(
第29条第1項本文又は第3項の規定により使用する者を除く。)があるときは、その者は、賃借権の設定又は借地権の譲渡があつた後(その賃借権の設定又は借地権の譲渡について、裁判があつたときは、その裁判が確定した後、調停があつたときは、その調停が成立した後)、6箇月間に限り、その土地の使用を続けることができる。但し、裁判所は、申立により、その期間を短縮し、又は伸長することができる。
2 第2条の規定により設定された賃借権又は
第3条の規定により譲渡された借地権の存続期間は、前項又は
第29条第1項本文若しくは第3項の規定による土地の使用の続く間、その進行を停止する。この場合には、その停止期間中、借地権者は、その権利を行使することができず、又、地代又は借賃の支払義務は、発生しない。
3 第1項の規定により土地を使用する者が、自ら、
第2条の規定による賃借権の認定又は
第3条の規定による借地権の譲渡を受けた場合には、前2項の規定を適用しない。
第7条 第2条第1項の借主が、同条の規定による賃借権の設定又は
第3条の規定による借地権の譲渡を受けた後(その賃借権の設定又は借地権の譲渡について、裁判があつたときは、その裁判が確定した後、調停があつたときは、その調停が成立した後)、1箇年を経過しても、正当な事由がなくて、建物所有の目的でその土地の使用を始めなかつたときは、土地所有者又は借地権の譲渡人は、その賃借権の設定契約又は借地権の譲渡契約を解除することができる。但し、その解除前にその使用を始めたときは、この限りでない。
2 第2条第1項の借主が、建物所有の目的でその土地の使用を始めた後、建物の完成前に、その使用を止めた場合にも、前項と同様である。
3 前条第1項又は
第29条第1項本文若しくは第3項の規定により土地を使用する者がある場合には、第1項の1箇年は、その使用の終つた時から、これを起算する。
第8条 第2条の規定による賃借権の設定又は
第3条の規定による借地権の譲渡があったときは、賃貸人又は借地権の譲受人は、借賃の全額又は借地権の譲渡の対価について、借地権者がその土地に所有する建物の上に、先取特権を有する。
2 前項の先取特権は、借賃については、その額及び、若し存続期間若しくは借賃の支払時期の定があるときはその旨、又は若し弁済期の来た借賃があるときはその旨、譲渡の対価については、その対価の弁済されない旨を登記することによつて、その効力を保存する。
3 第1項の先取特権は、他の権利に対し、優先の効力を有する。但し、共益費用不動産保存不動産工事の先取特権並びに前項の登記前に登記した質権及び抵当権に後れる。
第9条 疎開建物が除却された当時におけるその敷地の借地権者、その当時借地権以外の権利に基いてその敷地にその建物を所有してゐた者及びその当時におけるその建物の借主については、前7条の規定を準用する。但し、公共団体が、疎開建物の敷地又はその換地を所有し、又は賃借してゐる場合は、この限りでない。
第10条 罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された当時から、引き続き、その建物の敷地又はその換地に借地権を有する者は、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、これを以て、昭和21年7月1日から5箇年以内に、その土地について権利を取得した第三者に、対抗することができる。
第11条 この法律施行の際現に罹災建物又は疎開建物の敷地にある借地権(臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明かな借地権を除く。)の残存期間が、10年末満のときは、これを10年とする。この場合には、
第5条第1項但書及び第2項の規定を準用する。
第12条 土地所有者は、この法律施行の日から2箇年以内に、
第10条に規定する借地権者(罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された後、更に借地権を設定してゐる者を除く。)に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内に、借地権を存続させる意思があるかないかを申し出るやうに、催告することができる。若し、借地権者が、その期間内に、借地権を存続させる意思があることを申し出ないときは、その期間満了の時、借地権は、消滅する。但し、借地権者が更に借地権を設定してゐる場合には、各々の借地権は、すべての借地権者が、その申出をしないときに限り、消滅する。
2 前項の催告は、土地所有者が、借地権者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法で、これをすることができる。
3 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法の規定に従ひ、裁判所の掲示場に掲示し、且つ、その掲示のあつたことを、新聞紙に2回掲載して、これを行ふ。
4 公示に関する手続は、借地の所在地の地方裁判所の管轄に属する。
5 第2項の場合には、民法(明治29年法律第89号)
第98条第3項及び第5項の規定を準用する。
第13条 借地権者が更に借地権を設定してゐる場合に、その借地権を設定してゐる者については、前条の規定を準用する。
第14条 罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された当時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地に、その建物が滅失し、又は除却された後、その借主以外の者により、最初に築造された建物について、その完成前賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な借家条件で、その建物を賃借することができる。但し、その借主が、罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された後、その借主以外の者により、その敷地に建物が築造された場合におけるその建物の最後の借主でないときは、その敷地の換地に築造された建物については、この申出をすることができない。
2 前項の場合には、
第2条第2項及び第3項の規定を準用する。
第15条 第2条(
第9条及び
第32条第1項において準用する場合を含む。)若しくは
前条の規定による賃借権の設定又は
第3条(
第9条及び
第32条第1項において準用する場合を含む。)の規定による借地権の譲渡に関する法律関係について、当事者間に、争があり、又は協議が調はないときは、申立により、裁判所は、鑑定委員会の意見を聴き、従前の賃貸借の条件、土地又は建物の状況その他一切の事情を斟酌して、これを定めることができる。
第16条 第2条(
第9条及び
第32条第1項において準用する場合を含む。)若しくは
第14条の規定による賃借の申出又は
第3条(
第9条及び
第32条第1項において準用する場合を含む。)の規定による借地権の譲渡の申出をした者が数人ある場合に、賃借しようとする土地若しくは建物又は譲渡を受けようとする借地権の目的である土地の割当について、当事者間に協議が調はないときは、裁判所は、申立により、土地又は建物の状況、借主又は譲受人の職業その他一切の事情を斟酌して、その割当をすることができる。
2 裁判所は、当事者間の衝平を維持するため必要があると認めるときは、割当を受けない者又は著しく不利益な割当を受けた者のために、著しく利益な割当を受けた者に対し、相当な出捐を命ずることができる。
第17条 地代、借賃、敷金その他の借地借家の条件が著しく不当なときは、当事者の申立により、裁判所は、鑑定委員会の意見を聴き、借地借家関係を衝平にするために、その条件の変更を命ずることができる。この場合には、裁判所は、敷金その他の財産上の給付の返還を命じ、又はその給付を地代若しくは借賃の前払とみなし、その他相当な処分を命ずることができる。
第18条 第6条第1項但書(
第9条において準用する場合を含む。)又は
第15条乃至
前条の規定による裁判は、借地又は借家の所任地を管轄する地方裁判所が、非訟事件手続法により、これをする。
第19条 鑑定委員会は、3人以上の委員を以て、これを組織する。
2 鑑定委員は、裁判所が、各事件について、左の者の中からこれを指定する。
1.地方裁判所が、毎年予め、特別の知識経験のある者その他適当な者の中から選任した者
2.当事者が、合意で選定した者
第20条 鑑定委員会の決議は、委員の過半数の意見による。
第22条 鑑定委員には、旅費、日当及び止宿料を給する。その額は、最高裁判所がこれを定める。
第23条 第15条乃至
第17条の規定による申立があつた場合には、民事調停法(昭和26年法律第222号)
第20条の規定を準用する。この場合に、調停に付する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第24条 第6条第1項但書(
第9条において準用する場合を含む。)又は
第15条乃至
第17条の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。その期間は、これを2週間とする。
第25条 第15条乃至
第17条の規定による裁判は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
第25条の2 第2条乃至
第8条、
第10条乃至
前条及び
第35条の規定は、政令で定める火災、震災、風水害その他の災害のため滅失した建物がある場合にこれを準用する。この場合において、
第2条第1項中「この法律施行の日」及び
第10条中「昭和21年7月1日」を「
第25条の2の政令施行の日」と、
第11条中「この法律施行の際」を「第25条の2の政令施行の際」と、
第12条中「この法律施行の日」を「第25条の2の政令施行の日」と読み替えるものとする。
